SIGGRAPH 2024でRobloxが3D・4Dの革新について発表
Robloxは3D空間プラットフォームの分野で大胆なイノベーションを発生させています。アバター、アクセサリー、バーチャル空間を無数のクリエーターが制作し、世界中の人々とつながれる場です。
私たちはSIGGRAPHにて新しい技術とアルゴリズムの革新について発表する予定です。SIGGRAPHとは、CGとインタラクティブ技術に関する世界的な会議です。 発表される内容は、3Dマテリアルをゴムのように形成できる新技法、アバターの表情アニメーションの高速生成、これまで以上にリアルな髪の動きなど。 技術の組み合わせによって得られる理論上の結果は著しく、初期のプロトタイプは3D空間の未来を想像させます。 技術的な詳細に関しては、デンバーで開催されるSIGGRAPHでセッションに参加してください。
アバターのディテール向上
Robloxにおいて、個人による表現の核となるのがアバターです。完全な表情アニメーション、ボディ調整、衣装レイヤーに対応。プラットフォーム中で変わらない外見を設定できます。 デジタル表現に関する調査では、Z世代回答者の88%がRobloxのようなメタバースにおける自己表現が日常生活の中で自分を表現することに役立っていると回答。 最新のアバター技術を進化させることで、これからも自己表現のお手伝いをさせてください。
これまで3Dメッシュから新しいアバターを作成するには、複数段階の高度な技術的作業が必要でした。 これが静的な3Dアセットを動的でインタラクティブ、連動可能なものに拡張し、メタバース体験に適合させる4D生成の課題でした。 ケージング、リグ作成、スキニングなどの作業も関連するため、プロでもアバターの設定に1週間はかかります。 Robloxの先進的な衣装・表情関連の機能に互換性を持たせるため、さらなる作業も必要です。
「生成・ユーザー作成による3Dアバターの顔・体全体を自動でセットアップ」にて報告された通り、Robloxのアバター・コアAIチームは機械学習と形状処理技術を組み合わせることで、多段階のパイプラインを示しました。 この技法によりアバター作成は著しく高速で簡単なものになり、経験の少ないクリエーターでも完全に機能するアバターを設計しアップロードできます。
アバターの自動設定機能によってこのテクノロジーの威力を体感できるでしょう。形状のみが設定されたモデルをRoblox互換でカスタマイズ可能、アニメーション対応、リグ設定済み、スキニング済みのアバターに自動変換できるのです。 1週間かかっていた作業がほんの数分で終わるようになります。
多くの人はRobloxでアバターの髪型を変えて自分を表現します。 2023年だけで、Robloxユーザーの購入したヘアスタイル数は1億3900万以上。730万人のユーザーが5種類以上購入しています。 しかし、現実と同じようにそれぞれの束が動くリアルな髪型を作るのは困難でした。 人間の頭皮には平均で10万~15万の毛根が存在します。 この規模の複雑な形状情報を保存、伝達、シミュレーションするのは処理能力的に難しく、効率にも問題があります。
Robloxのジェム・ユクセルとLightSpeed Studiosおよびユタ大学の共同研究者が発表した論文「物理ガイドによるリアルタイム髪補間技術」にて、既存のシミュレーションされたガイドデータを活用した物理演算式の髪補間スキームが発表されました。 バーチャル空間における髪レンダリングの描画品質を大きく向上させる技術で、追加の負荷がかかることもありません。
リアルな3Dシミュレーションとレンダリング
人々の集うバーチャル空間だけでなく、バーチャル空間内に出現するオブジェクトもクリエーターの産物です。 Robloxの対応プラットフォームが増えるにつれて、デバイスに応じた解像度でオブジェクトが表示されることが重要になってきました。Androidでは低解像度、コンソールやVRヘッドセットでは高解像度ですが、可能な限り最適な解像度で表示される必要があります。
3Dレンダリングにおいて壁となりがちなのが光と影の表現です。 研究による進歩は著しいものの、既存の手法ではアンチエイリアスや被写界深度のようなカメラ効果にぼやけが発生することがあります。 NVIDIAやユタ大学と協力しRobloxのジェム・ユクセルが発表した「Area ReSTIR:リアルタイムぼかし・アンチエイリアスのための再サンプリング法」 はReSTIRにエリアサンプリング技術を取り入れ、上記のようなカメラ効果の処理効率を高めたものです。 適用することで光と影の区別がより鮮明になり、ディテールも向上。要求されるサンプル数も少なく済みます。
前バージョンのReSTIRで処理された街の風景
新技術Area ReSTIRで処理された同じ街の風景。光と影の品質が上がっている
Robloxのシュエ・デレック・リウらが発表した「ファジーロジックによる統合された微分可能ブール演算」は生成AIをCSG(空間領域構成法)による3D表現に対応させる技術です。 Robloxの高性能物理シミュレーターはCSGの採用により工学分野レベルの立体モデリングを実現。CSGにはリアルな形状の作成を簡単にしてくれる利点もあります。 エンターテインメント業界で表面のモデリングは一般的になっていますが、オブジェクトの中身は表現されていません。 CSGはこれまで生成AIと互換性がありませんでした。形状をAIに学習・適用させる際に、形状の連続的変化に類似した数学的プロパティが必要だったからです。 ファジー処理用の新たな数学的基盤の発明によってCSGが微分可能になり、CSG生成用のAIが作れるようになったのです。
ゴムのように伸縮する素材をCGで再現するのは難しいことで有名でした。 Robloxのリウらの発表した「安定化ネオフック・シミュレーション — 絶対固有値フィルタリングを用いた射影ニュートン法」はシミュレーションを安定化させる画期的な手法です。 既存のフレームワークからコードを1行変更するだけでこの新技術を導入でき、安定性と収束速度が著しく向上します。 モデルに適用した場合、伸縮した際に安定した形が保たれます。
これまでのシミュレーション手法ではリアルさと要求される処理能力との間でトレードオフが発生していました。 Robloxのユクセルとユタ大学の共同研究者らが発表した「頂点ブロック降下法」は高速で強力な物理演算を可能にする画期的な手法です。 既存の動的3Dシミュレーションに速さと安定性で勝ります。
この20年近く、Robloxは技術的イノベーションの恩恵を受けながら発展しています。研究開発に多大なリソースを投じてきた成果です。 よき研究開発にはリスクと偽りのない評価が必要です。 製品機能として盛り込まれるほどに実を結ぶ研究がすべてではありません。上記の例も必ずしも期待通りに実用化されるとは限りません。 しかし、ここで示された新技術の一部はすでにクリエーターが利用できるツールに取り込まれ、よりリアルなアバターや3Dワールドの可能性を開いています。 あらゆる研究が分野全体の進歩に貢献し、バーチャル3D技術の向上につながるのです。
SIGGRAPH 2024でAI、アバター、物理演算、グラフィックといった各方面の進化について世界に発表できることを光栄に思います。